注文住宅を建てるまでには、建築工期を含めて最短でも1年以上が必要です。建売住宅のように完成品を見て検討して購入するのとは違います。様々な手順を踏み、手続きを行う必要があります。「長丁場を待てるかしら」「手間がかかるのは面倒だなあ」と多少思っても、この手間と時間があるからこそ、注文住宅が完成したときの喜びは大きく、かけがえのないものになります。
また、注文住宅を建てるプロセスの中で、夫婦で話し合い、将来について考えるきっかけになり「お互いを理解し合えた」「役割分担ができた」「絆が深まった」という声を聞きます。共同作業を通して絆が深まります。悩み、大変だったことも、後から振り返ればいい思い出になり「あの時はこうだった」と笑い合える日が来るでしょう。そして、自分たちの思いがつまった家に格別な愛着がわいて、子どもたちも家やモノを大事にするようになるはず。それは、注文住宅ならではの喜びだと思います。
さて、その注文住宅を建てる際に建て主が行う基本的な流れ、ダンドリを10のステップで紹介していきましょう。(建て替えの場合は、Step4と6の土地探し・土地購入を除きます。代わりに、住宅の解体や地盤調査、改良などが必要になります)
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Step1 まずは要望の整理と情報収集
どんな暮らしがしたいかを考える
注文住宅のスタートは、家族の要望を出し合い調整しまとめることからです。どんな暮らしがしたいのか、どう過ごしたいのか、絶対にほしいものは何か、家族の要望を箇条書きにしてみましょう。
- パパ「バーベキューがしたいからウッドデッキが欲しい」
- ママ「娘たちとお菓子作りがしたいからキッチンはアイランド型がいい」
- 長男「週末は大画面で映画を見たいからホームシアターがほしい」
- 長女「朝の忙しい時間は洗面台の前の場所が取り合いになるから広い洗面所を」
などなど。
朝起きてから寝るまでの暮らしを考えて、どこで何をするかをイメージしていくと、どんな間取りがいいか、必要なもの、実は使わないものなども見えてきます。
自由な発想で夢を描いてみる
次に、予算を度外視して、個人の希望を出しましょう。
- 「屋根付きのカーポートか、シャッター付きのガレージがほしい」
- 「外観は輸入住宅風の可愛いデザインが好き」
- 「キッチンに家事室兼用のパントリーがほしい」
- 「お風呂から坪庭を眺めたい」
- 「子どもたちの個室はそれぞれ6畳以上確保したい」
- 「リビングの一角に居酒屋風の小上がりの和室を造りたい」
- 「壁でボルタリングがしたい」
最初から夢を諦める必要はありません。まずは予算を度外視して家族全員が夢を語り合い、思いを吐き出し、箇条書きにしましょう。全部書き出したら、それぞれが絶対に譲れないものか、予算が足りなければ諦められか、マークをつけて、家族で優先順位を決めていきましょう。


情報を集めてイメージを整理する
要望を整理したら、住宅雑誌、Webサイトなどを見て、実現したいプラン、好きなデザイン、テイスト、インテリアなどを集め、我が家のテーマ、希望のデザインテイストをある程度かためましょう。
頭の中でイメージしたものを依頼先に正確に伝えるのは難しいもの。好きなデザインの画像を集めたり、スクラップしておくと、建築会社にイメージが伝わりやすくなります。
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Step2 予算の計画を練る
夢は広がりますが、現実に戻って我が家の予算を把握し、マネープランを練ります。一生で一番高い買い物と言われる住宅。頭金はいくら用意できるか、親からの贈与は可能か、住宅ローンは月々いくらなら払えるかを考えます。結婚、出産、子どもの進学、夫の退職など様々なライフイベントでかかるお金のこと、子どもの教育費や車の購入費、家の税金や修繕・維持費なども確保して、いつ、どのくらいのお金が必要になるのか、多少の余裕をもって考えたいですね。
とはいえ、ライフプラン、マネープランを立てなら、建築会社やファイナンシャルプランナー、普段利用している金融機関など、プロに相談するのが早道。建築会社の無料の住宅ローン相談会なども活用しましょう。
Step3 建築会社の候補をしぼる
建てたい家のイメージやプランの要望がかたまり、情報を収集したら、建築会社の候補を複数検討していきましょう。Webサイトや雑誌を見て、資料を請求し、気になる会社があれば3社~5社くらいにしぼり、モデルハウスを見学したり、実例見学会などのイベントに参加してみましょう。どんな会社で、どんな家が建てられるのか、スタッフの対応なども確かめましょう。
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Step4 土地を探す(土地を購入する場合)
家を建て替える場合以外は、土地が必要です。施主が土地を探す場合、こだわるのは場所、地域だと思います。職場や学校、実家の近くがいい、子どもの学区もあり、転校させたくないといった希望があると、エリアは限られてきます。そして、立地環境や広さ、地盤なども気になりますね。
土地を探す際、自分でインターネットや雑誌で土地情報を探す方法もありますが、初めての土地探しや交渉は専門性が高く決断しにくいもの。例えば、敷地の形、土地の建ぺい率、斜線制限、容積率など建築基準法上の制限など様々な条件との兼ね合いで、希望の家を建てられるかどうかが決まります。素人が土地を見て判断するおんはハードルが高いです。
そこで、ハウスメーカーや住みたい地域の不動産会社に土地探しを依頼しましょう。建築を頼む予定の建築会社の人に同行してもらうと、「こんな家が建てられます」といったことも含めて的確なアドバイスがもらえるでしょう。土地探しの相談を通して、親身になってサポートしてくれる会社かどうかもわかります。
Step5 建築会社を決める
カタログやモデルハウスを見て、担当者とも会話をして、あるいは土地探しの相談にのってもらうなどして、候補の建築会社を3社くらいにしぼることができても、1社に決めるのは難しいですね。そんなときは、候補先に、家族の要望と予算を伝え、検討中の土地を見てもらい、設計と見積もりを依頼しましょう。
ここで注意したいのは、必ず同じ条件で依頼することと、数社に頼んでいることを伝えること。また、プランは家を建てる土地の条件とあわせて相談することがベストなので、土地の候補が決まっていることがポイントです。プランと見積もりができるまでは、1週間から1カ月ほど時間がかかる場合があります。
提案プランと見積もりが出そろったら、要望がきちんと反映されているかを確認し、比較検討します。金額だけにとらわれず、どんな内容でこの金額なのかを見極めましょう。また、プランが気にいったけど予算がオーバーする場合は、どうしたら予算内で希望のプランに近い家が建てられるかを相談してみましょう。その際の提案力や対応力を含めて、最適な家づくりのパートナーは、おのずと決まるのではないでしょうか。
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Step6 土地の申し込み(土地を購入する場合)
土地の購入を申し込む際は、売主に手付金を払います。不動産会社から買う場合の手付金は土地の売買価格の2割以内と決まっており、5%~10%が目安です。
土地の購入単独では、住宅ローンは利用できません。住宅ローンが実行されるまでは「つなぎ融資」を受けます。土地の購入で住宅ローンのつなぎ融資を受ける場合、建物のラフプランと見積もり概算が必要なので、Step5の、依頼先の絞り込みが前提になります。
Step7 本設計依頼と予算調整
依頼する建築会社を決定します。プラン、見積もりを依頼した他の会社には断りの連絡を入れましょう。さらに、ファーストプランを再度検討し、追加や変更を加えて精査して最終的な調整を行います。また、必要に応じて水廻りのショールームを訪ね、サンプルやカタログを見ながら、床材、建材、設備や仕様などを決めます。断熱性能や耐震性能などのグレードも決めていきます。
決めることは沢山ありますが、Step1の原点に戻って「どんな暮らしがしたいか」「家族のデザインテーマ」などを大事に、楽しみながら決めていきたいですね。建築会社が決めるべきことを提示してうまくリードしてくれるでしょう。プランは納得するまで練り直しましょう。
プランや設備・仕様のグレードが決まったらあらためて見積もりを提案してもらいます。予算がオーバーした場合は設備や建材のグレードを下げたり、将来リフォームしやすい部分を削るなどの工夫をしてみましょう。ただし、性能に関わる部分はグレードを落とさず、諦めたくないこだわり部分は我慢せず、建築会社と相談しながらコストコントロールを行います。
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Step8 契約・住宅ローン申し込み
設計図、見積もりに納得したら、工事請負契約を結びます。工事金額、着工日、工事完了日、工事金額の支払いスケジュールなどが記載された工事請負契約書、工事請負契約約款、設計図書、工事見積書、工程表などを数日前にもらっておき、事前に目を通して、必要なことが明記されているか、抜けはないか、わからないことは確認しておきましょう。契約時に用意する者は、実印、通帳印、源泉徴収票、本人確認書類などがありますが、建築会社から説明があります。
また、住宅ローンを正式に申し込み、本審査を受けます。
Step9 いよいよ着工
いよいよ工事が始まります。ここまで来れば、「決める」「考える」作業は一段落ですが、完成に向けて必要な手続きや儀式があります。工事を始める前に、近隣への挨拶はトラブルを防止するためにも必要です。工事で騒がしくなりご迷惑をかけます、これからよろしくといった意味も含めて、挨拶をしておきましょう。家を建てる際の「地鎮祭」「上棟式」を行うかどうかを決めます。
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「地鎮祭(じちんさい)」は、工事を始める前に、土地の神様にお祈りをして土地を浄化し、工事の安全を祈願する儀式です。土地の神様、浄化というと現実離れしていると思う人もいるかもしれませんが、日本では古来より「土地は神様のもので、人間は神様から土地を借りて田んぼにしたり家を建てている」という言い伝えがあるためで、気にしない人もいれば、行えば安心という人もいるでしょう。
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「上棟式」は、着工後、家の基礎構造を積み上げ、屋根の骨組みの一番高い所にある棟木(むなぎ)を取り付けた後に、竣工後の安全を願い行う儀式です。大工の棟梁など工事関係者へのご挨拶と労をねぎらう意味が強いです。「地鎮祭」「上棟式」は、簡略化したり、実施しないなどは地域によっても差があるので、家族の考え方次第で決めましょう。
建築中に現場を訪ねる場合は、邪魔にならないように。大工さんが黙々と仕事をする朴訥な職人タイプかもしれませんし、積極的に建築について説明してくれる方もいます。大工さんへのお茶出しや差し入れなどは義務ではありません、ねぎらう気持ちを伝えるなら、タイミングを見て、夏は冷たい、冬は温かい飲み物や持ち帰りができる個包装されたお菓子などが喜ばれるでしょう。
徐々に出来上がっていく我が家の完成に向けて、家具やカーテンの購入等を決めたり、ワクワクしながら引っ越しの準備を進めましょう。
Step10 注文住宅が完成!引き渡し・入居
いよいよ、注文住宅が完成すると、「完成立会い検査」を行います。施主、建築会社・施工会社の担当者や工事管理者等と一緒に完成した家をチェックします。建物が図面通りに施工されているか、施工の品質はどうかをチェックします。床や壁、柱に傷がないか、クロスに剥がれがないか、建具の開閉はスムーズか、照明はつくか、コンセントの位置や数は合っているか、水道や電気は使えるかなどをチェックします。最初に建築会社から説明があるので、難しくはありません。入居後に問題が起きないよう、クレームにならないようこの段階で、時間をかけて丁寧に一つひとつ見て確認します。
さらに、第三者機関による完了検査を行います。そこで不具合があった場合は、修繕補修等を行います。それでOKになれば建て主さんにカギの引き渡しが行われます。「我が家誕生記念日」になりますね。
建築会社とはこれからも長いお付き合いになります。アフターメンテナンス、保証内容の確認をしましょう。
購入した家が自分の財産であることを明らかにする「不動産登記」手続きが必要です。工事完了の確認ができ次第、建物の表題登記、建物の所有権保存登記、土地の所有権移転登記、抵当権設定登記などを行う必要があります。一定期間内に行わないと、過料が課せられます。これらの手続きは、通常は金融機関が指定した司法書士が代行します。登録免許税や司法書士報酬などがかかります。
まとめ
注文住宅を建てる基本的な流れ、ダンドリを10のステップで説明してきました。流れの中で最も大切なのは、依頼する建築会社の選定です。親身で信頼できる、リードが上手な建築会社に依頼すると、その後のダンドリもスムーズに進み、注文住宅を成功に導いてくれるでしょう。